小説モドキ「リア充爆発しろ!」

2831年。
人類は今滅ぼうとしています。
我々は遥か昔、惑星アースで生まれました。
高度な文明を作り上げてきました。
幾度もの戦争に耐え、私たちの祖先は立派に生きてきました。
人類の90%が死滅しても、生き残った者は懸命に生きてきました。
岩の塊になったアースに別れを告げ、我々の祖先は移民船で脱出したのです。
何十もの宇宙船は長旅の間にすこしずつ消えていきました。
ハコブネ。リヒテンステルン。ゼフラン。彼らは我々の礎になってくれたのです。
たくさんの犠牲を払って我々はついにこの惑星ゼンティアに到着したのです。
そして最高の文明を作り出しました。
祖先たちは犠牲者のことを毎日思い出しながら懸命に働いてきました。
しかし、その文明も今滅ぼうとしています。
ある一種類のウイルスによって。

H.B.V…Human Bomb Virus。

名の通り、菌が脳を食い荒らし、ガスを発生させ感染者を爆発させます。

 

 

 


A.D.2810/6/1   7:00


優雅なクラシック音楽が薄暗い室内を流れ始めた。
しかし、その音楽を聞く青年の表情は少しも優雅ではなかった。
「チッ…もう行かなきゃならねぇのかよ…。」
青年の名はラルツ=アートといった。彼は今年から州立クラスティオール生物学高校に通っていた。
アラームをとめ、身支度をする。
それもすぐに終え、玄関を施錠し駅へ。

「アガガァッ…うるぜぇ!!」

彼が異様なほどにいらだっている理由、それは駅にたむろする恋人達にあった。

「バディサ~今度の日曜日、うちこない?」
「え?何?マジ?」
「それがぁ~ケーキ焼いたんだけどぉ~おいしいかどうかわからないのぉお。だからたしかめてほしくって~」
「フッ…デイブの作った料理ならなんでもおいしいにきまってるじゃないか…」

あぁウザい。吐き気がする。死ねばいいのに。

「は?マジ?マジィ?!マジやばいんすけど!マジで!いやマジマジマジ!!」
「ヤベェ!クソヤベェな!マジで!キモすぎ~!」

あいつらは「マジ」と「ヤバい」しか言えないのか?
死ねばいいのに。本当に。
そう、爆発でもすればいい。今さっきまでニヤニヤしてたゴミが本当にナマゴミになるんだ。すばらしい。


「バディサああぁぁ!どぼぢだのおおぉぉ?!」


(ん?なにかあったのか?)


バディサとか呼ばれていた男は、頭を抱えてうずくまっていた。
しかも絶叫している。

「どぼぢだのお?!きゅーきゅしゃよヴぁなきゃああぁぁ!」

普通なら恐ろしく思うのだろうが、ラルツはそれも嬉々として聞いていた。
このまま死んでしまえ。そう思っていたのである。

パァン。

「は?」
次の瞬間のことだった。思わず声を上げていた。
風船でも破裂するかのような音を立てて、男の頭が爆ぜたのである。

数秒の沈黙の後、その場は突如として起こった得体の知れない事象を見た人々によって騒然としはじめた。

ラルツはただ呆然と立っていた。
人間の頭が爆発した。
ありえないことだ。
何故?
爆弾でもはいっていたのか?
いや、そんなものを入れてどうする?
まさか、オレが爆発しろと思ったからなのか?

「ぉぉ…これがオレの特殊能力ッ」

無意識のうちに小声でそんなことを言っていた。

同時に、そんなわけがあるわけないと思っていた。
冷静に考えなくても、ありえない。
では、何故?

今日は学校を休もう。そう決めた。

 


とある平凡なマンションの618階

明るい室内に一組の男女がいた。

「でさぁ!あいつ爆発したんだって!ヤバくね?!」
「は?ヤバっ!きっとデイブがかわい過ぎるからだよ!」
「うへへ~ありがとぉおアディス~」

頭がおかしいとしか思えない会話をしているのは、先ほどのデイブと、アディスという男である。

「でねぇ、アディス、その時いたキモ男が…どぼぢたのぉ?!アディス?!」

アディスは、頭を抱えてうずくまっていた。
なんとも言いがたい悲鳴を上げ始める。

しかし、デイブはすぐに冷静になった。

「もお~アディスったらぁ~!デイブに心配してほしいんだねぇ~もぉ~ごめんねぇ~かわいくっ…て!」

「て」を言った丁度そのとき、アディスの頭が爆発し、肉片が飛び散った。

そして、なまごみと化したアディスの悲鳴にかわって今度はデイブの悲鳴が響き渡った。

 

 


ラルツ宅

(まぁ…特殊能力とかあるわけないよな…。)
そう思いつつ端末のスイッチをいれる。
放送を受信させ、いつもは録画でしか見られないアニメ「アーマードアタッカーズ」のチャンネルに切り替えた。
しかし。
「はぁ?!なんだこれ!ふざけんなよ!」
ニュースの特番によってなくなっていた。
「…ん?」

「…頭が爆発するという今までにない事件ですが、我々ゼンティア惑星保安部は全力で捜査に当たります…」

さっきの、もう放送されてるのか。

「あれ?」

立体映像には、「オルスラント大通りで頭部が爆発」とある。
おかしい。さっきのアレは駅だったはずだ。

「…新しい情報が入りました。アークス市ではすでに42人の死亡が確認されているとのことです。」

「は?」

これはどういうことだ。あの駅以外の場所で?42?
ヤバい。
とっさにそう思った。

 

 


続く…わけない。たぶん。